2020年04月08日

お話 ぼくのさんぽ3

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「二人とも気をつけて。
 いってらっしゃい。
 ……さてと。」
お母さんは、いつもどおり
玄関で二人を見送ると、
洗い物をするために
くるりと台所へ向かった。

(いまだ!)
ぼくはいそいで立ち上がった。
「おっとっと。」
ドアが完全に閉まらないうちに、
ぐっと体をおしつけた。

いつもならジャンプをしても
とうてい届かないドアだ。
posted by suzumikawamura at 10:32| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする

2020年04月05日

お話 ぼくのさんぽ2

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「やったあ。今日の獅子座は、
 恋愛運がばっちりだって。」
 ゆみ姉ちゃんが
 食べかけのトーストをふりふり、
 テレビの占いをみてさわいでいる。

「ふふん。そんなもん、
 あたるわけない、ない。」
金運が最悪だった水瓶座のお父さんは、
機嫌が悪い。

「あら。魚座は願いがかなうかもですって。
 今度の夏休みは海外旅行ってどうかなあ。
 南の島のまっ青な海で泳いだら、
 気持ちよさそうねえ。」
お母さんの声はちょっとうれしそう。

「わあ、ほんと?海?海にいくの?」
ゆみ姉ちゃんが目をキラキラさせている。
この二人は団結すると強い。

「ああ、うん。どうかなあ。夏休みって。
 これ、今日の運勢だもんねえ。
 ……さて、ごちそうさま。」
あわててがたがたと
立ち上がるお父さんをみて、
お母さんはくふふと笑っている。

「あらあ、残念。さあさあ。じ、か、ん。
 二人ともいそいで。」
「ふあ〜い。ごちそうさま。
 いってきます。」
ゆみ姉ちゃんも口をもぐもぐさせながら、
あわててランドセルを持ち上げた。
posted by suzumikawamura at 12:19| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする

2020年04月01日

お話 ぼくのさんぽ1(全10話)

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朝の通勤時間に、
ぼくの家の前を通り過ぎていく
サラリーマン風の男の人がいる。
少し薄くなった頭を見ると、
まあおじさんと言っていい歳だろう。

いつもならそろそろ足音が
聞こえるころなのに、
今日はまだあらわれない。
(寝坊したのかな?おそいなあ。)

ぼくはいつもどおりに朝ご飯をすませると、
散歩がてら、その人を
探しに行くことにした。

うちの家族は、お父さんとお母さん、
小学3年生のゆみ姉ちゃん、そしてぼく。
来月でもう4歳になるというのに、
お母さんはぼくのことを
いつまでも赤ちゃん扱いする。

天気の良い日、お母さんはいっしょに
公園まで散歩に行ってくれる。
そりゃあ、うれしいけれど、
ぼくだって、
たまには一人で出掛けたい日もあるさ。
posted by suzumikawamura at 16:59| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする