2015年08月26日

すみれさんと雨 13

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「さあ、お客さん。そろそろ雨がやむ前に戻らないと、
 帰れなくなりますよ。私にはこれがありますけど、
 あいにく一人用で送ってさしあげられませんので。」
仕立て屋さんは、またさっきの電気自動車を指差すと、
ちょっと申し訳なさそうに言いました。

「また、糸のような雨が降る日には、ここにおります。
 ご注文いただけるようになりましたら、
 その時は一番にお仕立ていたしますね。」
「あら、こちらこそお忙しいところ
 おじゃましました。それじゃあ、また。」

仕立て屋さんは、またドレスの仕上げにとりかかりました。
すみれさんは、くるくるとまわる糸車を後に、
急いで引き返すことにしました。

〜つづく
posted by suzumikawamura at 08:59| お話 すみれさんと雨 16話 | 更新情報をチェックする

2015年08月13日

すみれさんと雨 12

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「私も一度くらい、そんなすてきなドレスを着てみたいなあ。
 でも、しょうがないわね、予約で一杯なら。」
「せっかく来ていただいたのに、すみません。
 そうだ、こちらはサービスです。どうぞお持ち下さい。」

仕立て屋さんはそう言うと、たくさんの布地の入った箱の中から
きれいにたたまれた布を一枚取り出しました。
広げてみると、虹のドレスの端切れで作られた
七色に輝くスカーフでした。

「すてきなスカーフ。」
肩にまわして結んでみると、胸元がひんやりしました。

〜つづく
(このお話は16話完結です)
posted by suzumikawamura at 10:37| お話 すみれさんと雨 16話 | 更新情報をチェックする

2015年08月10日

すみれさんと雨 11

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「これはね、電気自動車です。
 これで、雲の粒をとりにいくんですよ。」
よくみると、ドアの横にはミラーの変わりに、小さな羽根がついていました。

「そうやってその糸で仕立てた物は、そりゃあ光輝くドレスにぴったり。
 縫い目がいっさいわからないくらい、美しい仕立物が出来上がります。
 もう、注文はひっきりなしでね。今、新しいお客様は
 受け付けていないんですよ。申し訳ありません。」
仕立て屋さんは、すみれさんに向かって頭をさげました。

「え、いいえ。私はそんなつもりじゃなかったんだけど。 
 でも、ちょっと残念ねえ。」
仕立て屋さんが手にしているドレスは、
角度を変えてみると、虹のように光りました。

〜つづく
posted by suzumikawamura at 08:49| お話 すみれさんと雨 16話 | 更新情報をチェックする