2016年01月29日

行きたいところに行ける地図 9

「これは、失敗だったわね。
 あっはっは。」
おかみさんは手に持っていた瓶を
テーブルの上にトンと置き、
てきぱきと店の戸締まりをして
家へかえっていきました。

そしてすっかりあたりが
くらくなってから、男は
ようやく店の前へもどってきました。

あたりに人がいないのを確認すると、
音をたてずにドアへ忍び寄りました。
シャツの胸ポケットから針金を一本取り出し、
慣れた様子で鍵穴へ。

「ちょちょいと…」
カチリ。
「ほ、簡単、簡単」
扉の取っ手をゆっくりひくと、
細いすきまからすばやく忍び込みました。

〜つづく(9/15)
posted by suzumikawamura at 09:28| お話 行きたい地図 15話 | 更新情報をチェックする

2016年01月26日

行きたいところに行ける地図 8

ちいさな瓶の中には
もやもやとした霧がうずまき、
見る角度によって
さまざまな色に見えました。

紫や青、黄色やオレンジの光が、
とがった針のように写って見えます。

商品棚のラベルには
『こわがりやの悲鳴』
とかかれていました。

これを吸い込むと
かん高い大きな声がでます。
「きもだめしのお化け役の子が、
 相手を怖がらせる時に
 使ったらいいわね」

この商品を棚に並べる時、
おかみさんはそう考えていました。
でも今年の夏、こども達には
あまり評判がよくありませんでした。

お化け役同士の内緒話まで、
びっくりするくらい
大声になってしまうので、驚かすまえに
相手に見つかってしまうからです。

それにかん高い大声では、
なんだか雰囲気がでないんだと、
ほとんど使われないまま
返品されてしまいました。

〜つづく(8/15)
posted by suzumikawamura at 12:02| お話 行きたい地図 15話 | 更新情報をチェックする

2016年01月21日

行きたいところに行ける地図 7

そのころ『星の子や』の中では、
おかみさんが商品の片付けを
はじめていました。

大きな丸い体で、いつものように
陽気な鼻歌を歌いながら、
飾り棚のクロスをぴんとはりました。

「あ〜あ、これ。すっかり忘れてた」
おかみさんは、独り言を言いながら、
棚の奥に倒れていたガラス瓶を手にしました。

金色の蓋がついたガラスの瓶。
パスタソースでもはいっていそうな小瓶です。

〜つづく(7/15)
posted by suzumikawamura at 18:44| お話 行きたい地図 15話 | 更新情報をチェックする