2017年08月03日

「人形や珈琲店」第8話

人形や珈琲展 25-3.jpg

その時、暗い影が頭の上を横切りました。
見ると、壁には
古い大きな鏡がかけられています。
「なんだ、鏡か。びっくりした。
 さ、やっぱりこの子を描こう。」
とむさんは、スケッチブックの
表紙に手をのせました。

すると、なぜだか体がうまく動きません。
(両手が重くて上がらないぞ。
 雨にあたって風邪でもひいたかな……)
再び顔をあげると、
鏡の中にはいつもの自分の姿が見えます。
でもなにかがおかしいと感じました。

スケッチブックを持つ左手と、
鉛筆を持つ右手から、それぞれ
一本の細い糸が垂れています。
つつっと、両手が天井に向かって
ひっぱられると、
右手に持った鉛筆の芯が
パキッと軽い音をたてました。

人形や珈琲展 8-1.jpg

「うわあっ。」
とむさんは声をあげると
階段に向かって走り出しました。

〜つづく
(8/10)
ラベル:絵本
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2017年08月01日

「人形や珈琲店」第7話

人形や珈琲展 25-2.jpg

左右の壁際には、
うねうねとした模様がうかぶ、
木彫りの低い棚がならんでいます。
その上に自分たちの出番を待つ
大小さまざまな人形が、
糸をたらして静かに座っていました。

くすんだ灯りのもと、
棚やテーブルにのっている人形達は、
顔だけが浮かび上がってみえます。
小さな顔の一つを見下ろすと、
長いまつげは真っ直ぐに正面を
見つめていました。

あの目が動いて、
急にこちらを向くのではないだろうか。
とむさんは、そんな気がして、
なかなか目をそらすことが
出来ませんでした。

〜つづく
(7/10)
ラベル:絵本
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2017年07月29日

「人形や珈琲店」第6話

人形や珈琲展 25-1.jpg

よく見ると、灯りとりの小窓には
人形の絵が描かれているマッチ箱が、
兵隊のように一列に並んで続いています。
マッチ箱の兵隊がとぎれて、
ランプのともる二階の部屋に着きました。

灯りが揺れると、
それほど広くない部屋の角には、
いくつもの人形の影が、
こちらを笑っているように揺れています。

部屋の中央におかれている
大きなガラスケースの中には、
昔話の登場人物が並んで眠っていました。
正面には、ほうきにのった
かぎ鼻の魔法使いが細い糸で釣られています。
その隣には、大きな鎧の人形がヤリを右手に
こちらを睨んでいます。
部屋にいるのは人形だけでした。

「ランプの火がゆらいで、人影に見えたのか。」
とむさんは、鎧の人形を横目でみながら、
自分に言い聞かせるようにつぶやきました。

〜つづく
(6/10)
ラベル:絵本
posted by suzumikawamura at 09:00| お話 人形や珈琲店 10話 | 更新情報をチェックする