2020年04月11日

お話 ぼくのさんぽ4

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「うーん。えい!」
背中と頭にぎゅうっと力を入れて、
体を思い切り外へ伸ばしてみた。
そのとき、手足が急にのびた気がして、
ぐんっとドアが開いた。

(やったあ、ふう。)
朝のひんやりした空気の中に立って、
一つ深呼吸。
冷たい風が、ぷうっと
ぼくのおでこをなでていった。
(へんだな)
朝独特の良いにおい
がする時間なのだけど。

それに、いつもなら
だれか走る音やおしゃべりする声が
聞こえる時間なのに、
今日は不思議とシンと静かだ。

「ふーむ。まずは、
 駅の方へ行ってみよう。」
ぼくは右足を一歩、前に出して驚いた。
なんと、自分の足に丸い吸盤が
たくさん並んでいるのが見えた。
「ん?なんだこれ。」
posted by suzumikawamura at 14:27| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする

2020年04月08日

お話 ぼくのさんぽ3

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「二人とも気をつけて。
 いってらっしゃい。
 ……さてと。」
お母さんは、いつもどおり
玄関で二人を見送ると、
洗い物をするために
くるりと台所へ向かった。

(いまだ!)
ぼくはいそいで立ち上がった。
「おっとっと。」
ドアが完全に閉まらないうちに、
ぐっと体をおしつけた。

いつもならジャンプをしても
とうてい届かないドアだ。
posted by suzumikawamura at 10:32| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする

2020年04月05日

お話 ぼくのさんぽ2

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「やったあ。今日の獅子座は、
 恋愛運がばっちりだって。」
 ゆみ姉ちゃんが
 食べかけのトーストをふりふり、
 テレビの占いをみてさわいでいる。

「ふふん。そんなもん、
 あたるわけない、ない。」
金運が最悪だった水瓶座のお父さんは、
機嫌が悪い。

「あら。魚座は願いがかなうかもですって。
 今度の夏休みは海外旅行ってどうかなあ。
 南の島のまっ青な海で泳いだら、
 気持ちよさそうねえ。」
お母さんの声はちょっとうれしそう。

「わあ、ほんと?海?海にいくの?」
ゆみ姉ちゃんが目をキラキラさせている。
この二人は団結すると強い。

「ああ、うん。どうかなあ。夏休みって。
 これ、今日の運勢だもんねえ。
 ……さて、ごちそうさま。」
あわててがたがたと
立ち上がるお父さんをみて、
お母さんはくふふと笑っている。

「あらあ、残念。さあさあ。じ、か、ん。
 二人ともいそいで。」
「ふあ〜い。ごちそうさま。
 いってきます。」
ゆみ姉ちゃんも口をもぐもぐさせながら、
あわててランドセルを持ち上げた。
posted by suzumikawamura at 12:19| お話 ぼくのさんぽ 10話 | 更新情報をチェックする