2017年08月06日

「人形や珈琲店」第9話

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足元の人形達につまずきそうになりながら、
急いで一階に下りると、とむさんは
あわてて自分の両手を確認しました。
さっき見えた細い糸はもうありません。
右手には、しんの折れた鉛筆。
左手には小さなスケッチブックを持っているだけです。


カウンターではできたてのコーヒーが
良い香りをたてていました。

「良い絵はかけましたか?」
店主は、とむさんの折れた鉛筆を見ながら
ほほえむと、湯気のたつ
小さいカップを差し出しました。
後ろの階段を見ると、
まだ人影がゆらゆらと揺れています。

とむさんは、かたかたと震える手で
コーヒーを一口飲むと、
急いで玄関へ向かいました。
「ご、ごちそうさま。」

「おや、もうお帰りですか。」

〜つづく
(9/10) 次回最終話です。
ラベル:絵本
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2017年08月03日

「人形や珈琲店」第8話

人形や珈琲展 25-3.jpg

その時、暗い影が頭の上を横切りました。
見ると、壁には
古い大きな鏡がかけられています。
「なんだ、鏡か。びっくりした。
 さ、やっぱりこの子を描こう。」
とむさんは、スケッチブックの
表紙に手をのせました。

すると、なぜだか体がうまく動きません。
(両手が重くて上がらないぞ。
 雨にあたって風邪でもひいたかな……)
再び顔をあげると、
鏡の中にはいつもの自分の姿が見えます。
でもなにかがおかしいと感じました。

スケッチブックを持つ左手と、
鉛筆を持つ右手から、それぞれ
一本の細い糸が垂れています。
つつっと、両手が天井に向かって
ひっぱられると、
右手に持った鉛筆の芯が
パキッと軽い音をたてました。

人形や珈琲展 8-1.jpg

「うわあっ。」
とむさんは声をあげると
階段に向かって走り出しました。

〜つづく
(8/10)
ラベル:絵本
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2017年08月01日

「人形や珈琲店」第7話

人形や珈琲展 25-2.jpg

左右の壁際には、
うねうねとした模様がうかぶ、
木彫りの低い棚がならんでいます。
その上に自分たちの出番を待つ
大小さまざまな人形が、
糸をたらして静かに座っていました。

くすんだ灯りのもと、
棚やテーブルにのっている人形達は、
顔だけが浮かび上がってみえます。
小さな顔の一つを見下ろすと、
長いまつげは真っ直ぐに正面を
見つめていました。

あの目が動いて、
急にこちらを向くのではないだろうか。
とむさんは、そんな気がして、
なかなか目をそらすことが
出来ませんでした。

〜つづく
(7/10)
ラベル:絵本
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