「はあ、たすかった。あ、そうそうスカーフ。」
すみれさんは胸元のスカーフをほどいて、
両手に広げてみました。
そのとき、すみれさんの周りに
ぴゅうっと小さな風がふきました。
「あっ。」
風はすみれさんのスカーフをさっと持ち上げて、
そのまま上へ上へと飛ばしていきました。
そしてあっという間に豆粒くらいに小さくなった後、
とうとうすっかり見えなくなってしまいました。
パーッと、雨上がりの空に虹がかかりました。
「わあ、きれい!」
すみれさんは、七色の大きな虹を
いつまでもみつめていました。
〜おわり(全16話)
2015年09月04日
すみれさんと雨 16(最終話)
posted by suzumikawamura at 16:57| お話 すみれさんと雨 16
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2015年09月03日
すみれさんと雨 15

少し先に、ひらひらと黄色い蝶がみえました。
みーの毛糸のリボンです。
そろりそろりとゆっくり進んでいくと
りんりんと鈴の音がすぐ近くからきこえます。
すみれさんは、そっと手をさしだしました。
すすっとまばたき2回したところで、
いつの間にか元の水たまりの前に立っていました。
日が落ちて茜色の雨上がりの道に、
ぴょんぴょんとはねまわるこねこのみーがいました。
首にむすんだ黄色い毛糸が
うれしそうにふわふわと踊っています。
「ああ、よかった。ありがとうね、みー。」
水たまりをのぞいても中の光は、もうみえませんでした。
〜つづく(次回16話で完結)
posted by suzumikawamura at 10:29| お話 すみれさんと雨 16
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2015年09月01日
すみれさんと雨 14

「あら。」
しばらく進むと、雨のいとが
だんだん細くなっている事に気がつきました。
「急がないと……。あっ!いけない。」
水たまりの入口まであともう少し、というところで、
手元の糸が急にぷつんと切れてしまいました。
来た道を明るく照らしていた糸車の光は消えて、
あたりはすっかり暗くなってしまいました。
ほんの、もう少しなのに。
(どうしよう。)
り、りんりん。
どこからか、みーの首につけた鈴の音が聞こえました。
「みー!」
〜つづく
posted by suzumikawamura at 09:31| お話 すみれさんと雨 16
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