みると、小さな猫と大きな猫が
へいの上からこちらを見ていました。
小さな猫は丸い顔、大きな猫は四角い顔。
四角い顔の大猫は
へいの上から落ちそうになったので、
片足をあわててひっこめた所でした。
あさちゃんが窓から顔をだすと、
猫たちはこちらを見ながらゆうゆうと
ビスケットを食べ始めました。
そして食べ終わると、振り返りながら
走って逃げて行きました。
小さな風が吹き、時計草の花がゆらゆら
揺れています。
(まさか、さっきの子達?
もしかしてビスケットのお礼に、
時間を戻してくれたのかな)
「おーい、ありがとね。
この次は絶対一緒にあそぼうね!」
あさちゃんは、窓を開けて大きな声でそういうと、
(よーし、今度は煮干しを持って
あそびに行かなくちゃ)
と小さくひとり言をつぶやきました。
〜おわり(全6話)
2015年12月14日
ビスケットのお礼 6 最終話
posted by suzumikawamura at 09:42| お話 ビスケットのお礼 6
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2015年12月12日
ビスケットのお礼 5
一人になって、急に心細く
泣きそうになったとき、
すぐ先に見える家のベランダに、
なんだか見覚えのある茶色い
プランターが見えました。
「家だ!」
お母さんが、あさちゃんのお弁当用にと、
この春に植えたプチトマトでした。
あさちゃんは大急ぎで玄関へ向かいました。
「ただいま!」
「あら、おかえり」
お母さんの声です。
約束の時間をとっくにすぎたのに、
のんびりした声でした。
不思議に思って時計を見ると、
まだ6時になったばかりです。
「あれれ、どうして…?」
その時、窓の向こうで、大きな音がしました。
ドシーン、バタバタ。フニャー。
〜つづく
泣きそうになったとき、
すぐ先に見える家のベランダに、
なんだか見覚えのある茶色い
プランターが見えました。
「家だ!」
お母さんが、あさちゃんのお弁当用にと、
この春に植えたプチトマトでした。
あさちゃんは大急ぎで玄関へ向かいました。
「ただいま!」
「あら、おかえり」
お母さんの声です。
約束の時間をとっくにすぎたのに、
のんびりした声でした。
不思議に思って時計を見ると、
まだ6時になったばかりです。
「あれれ、どうして…?」
その時、窓の向こうで、大きな音がしました。
ドシーン、バタバタ。フニャー。
〜つづく
posted by suzumikawamura at 08:56| お話 ビスケットのお礼 6
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2015年12月09日
ビスケットのお礼 4
あさちゃんは一枚残ったビスケットを、
半分ずつわけてあげました。
「でも困ったな。
私、家に帰る道がわからないんだ。
あなたたち道をしってる?」
すると二人は、
「もちろん。この辺は
自分ちの庭みたいなものだから、ね!」
「ね!」
と、顔を見合わせました。
そして、
「さあ、こっちへきて」
というと、素早い動きでへいの下をくぐり、
ぱたぱたとかけ出しました。
「まってよ」
あさちゃんは、少し遅れながら
あわてて追いかけました。
夢中でどんどん進んで行くと、
低い木にからまったツルの中に、
薄紫色の花が揺れているのが見えました。
時計草のある最初の場所にもどってきたようです。
そのとき、目の前にいたはずの二人が
みえなくなってしまいました。
「うそ、おいてかれちゃった?」
〜つづく
半分ずつわけてあげました。
「でも困ったな。
私、家に帰る道がわからないんだ。
あなたたち道をしってる?」
すると二人は、
「もちろん。この辺は
自分ちの庭みたいなものだから、ね!」
「ね!」
と、顔を見合わせました。
そして、
「さあ、こっちへきて」
というと、素早い動きでへいの下をくぐり、
ぱたぱたとかけ出しました。
「まってよ」
あさちゃんは、少し遅れながら
あわてて追いかけました。
夢中でどんどん進んで行くと、
低い木にからまったツルの中に、
薄紫色の花が揺れているのが見えました。
時計草のある最初の場所にもどってきたようです。
そのとき、目の前にいたはずの二人が
みえなくなってしまいました。
「うそ、おいてかれちゃった?」
〜つづく
posted by suzumikawamura at 09:34| お話 ビスケットのお礼 6
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