2020年05月01日

お話 ぼくのさんぽ10 最終話

p iroboku10.jpg

脇にはうすっぺらい四角い鞄を
かかえている。
ときどき吹く風のせいで、丸い頭が
いつもよりいちだんと寒そうだ。

男の人は、赤いほっぺたを
ふくらませて、
くちびるをとがらせると、
「よ〜し、よし。ピュッ。」
と口笛を吹いた。
(うわ、タコそっくり)

「雪がやんだら、
 お散歩にいきましょうね。」
洗濯物を両手に抱えたお母さんは、
こう言ってぼくの顔をのぞき込んだ。
でもぼくはがまんできずに、
開いたベランダから庭にでて、
雪の中をかけまわった。

つもった雪をかいて穴をほり、
冷たい雪の上をごろごろと転がった。
そして毛についたかたまりを
ブルッと吹き飛ばした。

しっぽでバランスをとりながら、
降る雪に向かってジャンプ。
「ああ、やっぱり犬が一番!」
posted by suzumikawamura at 18:32| お話 ぼくのさんぽ 10 | 更新情報をチェックする

2020年04月28日

お話 ぼくのさんぽ9

p iroki.jpg

じんわりととけて、
またキラキラと降ってくる。
「雪だ!な〜んだ雪か。
 どおりで寒いと思った。」

細くあいたベランダから、
冷たい雪がしんしんと
吹き込んでくる。
ぼくは、ごろりと横になって
うとうとしていたらしい。

「あら、やあだ。今日、
 降るっていったっけ?天気予報。」
うっかり洗濯物をぬらしてしまった
お母さんは、ぼくの返事を聞く前に、
ベランダの戸をカラカラと開けて
慌ててサンダルをはいている。

そのとき、見覚えのある
丸い頭が塀の向こうにみえた。
いつもの男の人が
こちらをみて笑っている。
posted by suzumikawamura at 17:57| お話 ぼくのさんぽ 10 | 更新情報をチェックする

2020年04月25日

お話 ぼくのさんぽ8

p iroaoao.jpg

光はつかまえようとすると、
すっと消える。
よく見ると上から次々と
落ちてきているようだ。

「きれいだな。」
ぼくは、その不思議な
光の正体を知りたくなった。
八本の足を伸ばして、縮めて、
スイー、スイー。
「はは、わりと上手く
 泳げるじゃないか。」

頭の上へ小さな光が
どんどん押し寄せてきた。
「う〜ん、まぶしい。」
思わず目をつぶると、
ヒヤリ。

「うほっ。」
鼻の頭に冷たい物が落ちてきた。
posted by suzumikawamura at 12:47| お話 ぼくのさんぽ 10 | 更新情報をチェックする