
脇にはうすっぺらい四角い鞄を
かかえている。
ときどき吹く風のせいで、丸い頭が
いつもよりいちだんと寒そうだ。
男の人は、赤いほっぺたを
ふくらませて、
くちびるをとがらせると、
「よ〜し、よし。ピュッ。」
と口笛を吹いた。
(うわ、タコそっくり)
「雪がやんだら、
お散歩にいきましょうね。」
洗濯物を両手に抱えたお母さんは、
こう言ってぼくの顔をのぞき込んだ。
でもぼくはがまんできずに、
開いたベランダから庭にでて、
雪の中をかけまわった。
つもった雪をかいて穴をほり、
冷たい雪の上をごろごろと転がった。
そして毛についたかたまりを
ブルッと吹き飛ばした。
しっぽでバランスをとりながら、
降る雪に向かってジャンプ。
「ああ、やっぱり犬が一番!」